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塾長 

伊藤重彦(SHIGEHIKO ITO)

専門:地域感染対策

 《はじめに》

病院、介護福祉施設などさまざまな規模の施設の感染対策ラウンド行ってきました。ラウンドが100施設を越えた頃から、どの施設にも共通する問題点と施設ごとに異なる問題点があることがわかってきました。施設の構造、感染対策に対する施設長の理解度、職員の情熱、ICT活動レベルなど、ハード・ソフトはそれぞれの施設でまちまちです。また、病院と介護福祉施設では、感染対策に掛ける費用に雲泥の差があり、1患者1手袋が大変な出費と考える介護施設が数多くあります。このような状況のなかで、CDCやDHガイドラインに埋め尽くされた感染対策本の1ページから20ページを一律に指導しても、感染対策がうまくいくはずはありません。

《感染対策のコツは、現場にある》

感染対策が必要な現場に実際に出向き、施設の職員の意見に耳を傾け、各施設のハード・ソフトの事情にあわせた無理のない対策を検討することが、長続きする効果的な感染対策に繋がります。現場にとってハードルの高いエビデンス重視の指導では、まさに絵に描いたもちを食べさせるようなものなのです。
もちろん、「エビデンス」や「ガイドライン」は感染対策の目指すゴールがイメージできる点で強い味方です。標準予防策はその典型でしょう。
しかし、「非劣性」と「費用対効果」に裏付けされたエビデンスを導入し、効果をあげることができるような実力のある施設は、意外に少ないことを認識しておくことが重要です。

《スタンス》

この塾のスタンスは、エビデンスを重視しながらも、あくまで施設の事情に合わせた、オーダーメイド対策を目指します。従って、この塾が提供する感染対策のknow-howは、エビデンスに基づいた説得力はないかもしれません。
しかし、効果的、かつ容易に実践できる感染対策の一つの手法として、きっとご施設のお役に立てると思っています。

塾の基本方針

1.「すべての職員の手指衛生が完璧なら、感染対策は90%成功している」
・結局、感染対策は手洗いにはじまり、手洗いに終わる
・手洗いが十分できている集団では、それなりの効果的対策が行われている

2.「ベストより ベターな感染対策を目指す」
・施設の事情を考慮した、オーダーメイド対策を行う。
・感染対策10項目で平均50点より、的を絞った3項目で平均90点を目指す。
・エビデンス、ガイドライン通りの対策ができる施設は一握りである。
・感染対策の達成度は、感染対策予算より職員の教育レベルに影響される
・誰でも実践でき、ひとりの脱落者もでない長続きする対策から導入する

3.「地域全体で取り組む感染対策が重要である」
・病院、介護福祉施設から学校、職場、イベント会場まで、人が集まる場所は、すべてが感染対策の対象である。
・介護福祉施設は、微生物のリザーバーとなっているため、注意が必要である。
・在宅医療のなかにこそ、順守すべき感染対策の最大公約数がある

 

(2016年3月 伊藤重彦)